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2024-01-10

和紙から糸を紡いで、追って、布にする。紙布。連載第4回「土着の工芸」

和紙を割いて、依って、糸にして、織って、布にする。
気の遠くなるような仕事ですが、
なんでわざわざその手法で布づくりをするのか、に関心がありました。
古いものを残したい、という気持からだけではないのでは、と思ったからです。

神秘の「紙布しふ」の世界

出来上がったものの風合い、色合いは素人の私から見ても美しく。
山内さん自身、ほかの方の紙布の作品に心打たれてこの世界に入ったのだそう。
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紙布ならなんでもいいってことではないと思いますが。
山内さんの作品は島根県総合美術展で金賞を受賞した後、県展では、2021年2022年とも連続して、紙布の帯が銀賞金賞を受賞。
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帯一本を織るために、畳3分の1ほどの大きさの和紙を50枚近く使う。
ひと月半をかけて、帯一本がようやく仕上がる。
和紙1枚を糸にするのに6時間かかるため、50枚を糸にするには300時間がかかる。それこそ、本当に祈りのものづくりだなと思います。
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めざすところは「自分の意思や自我が先行しすぎていないもの」と仰っていました。
「自分がコントロールするのではなくて、あるべきものがあるところにある。その素材がなりたい形になっていると感じられるようなもの。すべてにおいて無理がないというか」
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ただ、この紙布も、和紙の産地などではとくに、昔はふつうに農家で行われていた自給の衣料づくりの手法でした。
こうした取材をする度に、ものづくりそのものではなく、今あえてそれを選ぶ理由、気持が、次につながる大事な点のような気がするのかもしれないな、、と思います。
自然に対する畏怖みたいなものに近い気持じゃないかなぁとも。

神秘の「紙布しふ」の世界


写真:菊井博史さん

諸紙布経緯絣帯地《木立》(もろしふたてよこがすりおびじ《こだち》)

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